相続法改正のポイントその7です。
ポイント⑦
= 相続人の配偶者の貢献に配慮する、特別寄与の制度ができた =
なんだか難しそうですね。
法律相談の現場を想像してみましょう。
父の仕事を長男夫婦が一緒に継いでいました。
父が亡くなり相続となりました。長男の妻は、自分はお給料と言えるものをもらわずに頑張ってきたのに、自分の働きは義父(長男の父)の相続で評価されないのか、不満に思っている。
改正前の法律相談はどうでしたでしょうか?
弁護士 : 民法は被相続人の維持・増加に特別に寄与(貢献)した人に
寄与相当額の財産を取得させる制度があります。
でも、それができるのは、「相続人」の特別な貢献だけに認
められた制度ですから、あなたの貢献を直接認めてはくれま
せん。
あなたの貢献を相続人である「夫」の特別寄与として考えら
れないか検討してみましょう。
妻はなかなか納得できなかったでしょう。自分の貢献を夫の貢献と評価するのは限界がありますし、よくよく考えると無理ですね。
夫が先に亡くなっていて、代襲相続で子が相続人となったとしても、夫とともに貢献してきたことを、子の特別寄与とみるのはありえません。
つまり、相続人以外の特別寄与は正当に評価されていなかった。
そこで、相続人でなくとも親族に限って、貢献を評価する制度を定めました。
改正民法(1050条1項)は、被相続人に対して無償で療養を看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした被相続人の親族は、相続の開始後、相続人に対し、特別の寄与に応じた額の金銭の支払を請求できる、としました。
改正後の法律相談では、お話しできます。
弁護士 : あなたは相続人ではありませんが、親族(一親等の姻族)で
すから、あなたの父の遺産への貢献を資料で検討して、金銭
評価しましょう。
その場合は、相続人が複数いるようですから、各相続人の相
続分に応じた特別寄与料の請求となります(同条4項)。
まず、相続人に協議を求めましょう、協議が難しいときは家庭裁判所に協議に代わる処分を請求しましょう(同条2項本文)。
相続開始を知ってから原則6か月経過、あるいは、相続開始のときから1年で請求できなくなりますから(同条2項但書)、いそぎ、行動を開始する必要があります。
相続が発生すると、相続人間で、だれが先に動くか、けん制し合うときがあります。そのときも、相続人でない妻も遅れをとらず、自分の特別寄与を相続人に通知して協議を求めておくことです。
民法は、すこし、せっかちになったようです。