(新)弁護士のための法律相談 ③になります。
「経済的利益とは何か―――? 報酬発生の実質的な根拠」
それは、「依頼者に利益が得られた」から。
その一つが「経済的利益」です。
経済的利益が得られたというのは、どういう状態なのか、報酬請求ができるのはどの時点か、検討します。
たとえば、調停や審判で、また訴訟で、不動産の所有権や持分が認められたという場合はどうでしょう。
自分の物になる――つまり、帰属が確定さえすれば、登記手続きを行う前であっても、経済的利益を得たと認めることもできるといえます。
相手方の資力が十分であれば、同様に相手方に対する貸金請求権が訴訟上の和解等で確定しさえすれば、経済的利益は得られたとみてもおかしくはないでしょう。
このような場合に、弁護士も依頼者も、経済的利益を獲得した、という認であれば、報酬請求できることになります。
でも、依頼者が、権利の確定だけではなく、現実に「登記簿に自分の権利が登記される」「相手方から現金が振り込まれる」ことをもって経済的利益が得られたとする、という成功報酬に関する合意をすることも、個々の契約上、有効といえます。
依頼者と弁護士との間でそのような認識であれば、相手方から和解金等の支払いがない以上、成功報酬は発生しないし、請求できないといえます。
委任契約書を作成する専門家である弁護士としては、依頼者との間で詰めておく、説明をして合意を得ておく必要があるでしょう。
経済的利益が得られたか否かの点と、弁護士に仕事の範囲をどこまで依頼したかという点は、関係しています。
判決が出ても、素直に支払わないと思われる相手方であれば、委任契約の締結時に当初から、「判決あるいは和解等により権利が確定しても任意に支払われない場合は強制執行する」ことも委任の範囲に加えることが考えられますし、多分支払ってくるだろうと思われ、当初委任範囲に含めないとしても、強制執行が必要となる場合に備えて、費用見積りを提示しておくことになります。
わかりやすい説明をしておかないと、アフターサービスという認識で、回収の点も事件の依頼範囲に含まれると解する依頼者もいるでしょう。
取立て行為、強制執行など回収が当初の委任の範囲に含まないのであれば、当初着手金に含まれるアフターサービスではないことを依頼者に説明をしておく必要があるし、委任契約において、その説明義務は弁護士にあります。
「経済的利益が得られた」、とは何を意味するか、という点だけではなく、任意に支払われない場合の請求、強制執行まで含めて、どのように契約上扱うかについて依頼者に説明をし、合意しておく必要があります。
この点で抜かりがあれば、説明不十分であったということになります。